たせう 現代仮名遣い。 03 十六花|第15巻(寅の巻)|霊界物語

03 十六花|第15巻(寅の巻)|霊界物語

たせう 現代仮名遣い

太玉命 ふとたまのみこと は 路傍 ろばう の 岩 いは に 腰打掛 こしうちか け、 天津祝詞 あまつのりと を 声低 こゑびく に 奏上 そうじやう しつつあつた。 百鳥 ももどり の 声 こゑ は 遠近 ゑんきん の 林 はやし に 聞 きこ え 始 はじ めた。 東 ひがし の 空 そら はほんのりとして 暁 あかつき の 色 いろ 刻々 こくこく さえて 来 き た。 数多 あまた の 魔神 まがみ の 声 こゑ は 森 もり の 彼方 あなた にザワザワと 聞 きこ え 来 きた る。 油断 ゆだん ならじとキツト 身構 みがまへ する 折 をり しもあれ、 馬 うま の 蹄 ひづめ の 音 おと いと 高 たか く、 岩彦 いはひこ 、 梅彦 うめひこ 、 音彦 おとひこ 、 亀彦 かめひこ 、 駒彦 こまひこ 、 鷹彦 たかひこ は 矢 や を 射 い る 如 ごと く 此 この 場 ば に 馳来 はせきた り、 太玉命 ふとたまのみこと に 向 むか つて、 岩彦 いはひこ 『ヤア 貴下 きか は 太玉命 ふとたまのみこと の 宣伝使 せんでんし 、 私等 わたくしら はフサの 都 みやこ に 於 おい て、 日 ひ の 出別神 でわけのかみ の 命 めい に 依 よ り、 貴下 きか と 共 とも に 顕恩郷 けんおんきやう を 言向和 ことむけやは さむと、 エデン 河 がは の 濁流 だくりう を 渡 わた り、 漸 やうや く 此処 ここ に 走 は せ 参 さん じたり、 一行 いつかう の 人々 ひとびと は 如何 いかが なりしか』 太玉命 ふとたまのみこと 『ヤア 思 おも ひも 寄 よ らぬ 貴下等 きから の 御入来 ごじふらい 、 いよいよこれより 敵 てき の 牙城 がじやう に 唯一人 ただひとり 進撃 しんげき せむとする 場合 ばあひ で 御座 ござ る。 斯 かく の 如 ごと き 曲神 まがかみ の 砦 とりで を 言向 ことむ け 和 やは すは 吾 われ 一人 ひとり にて 充分 じゆうぶん なり。 折角 せつかく の 御出馬 ごしゆつば なれど、 貴下 きか は 速 すみや かにフサの 都 みやこ に 引返 ひきかへ し、 夫々 それぞれ の 神業 しんげふ に 就 つ かせられたし』 岩彦 いはひこ 『それはあまり 無謀 むぼう の 極 きはみ と 申 まを すもの、 吾々 われわれ は 折角 せつかく 山川 さんせん を 渡 わた り 漸 やうや く 此処 ここ に 立向 たちむか ひ、 目前 もくぜん に 敵 てき を 見 み ながら 空 むな しく 駒 こま の 頭 かしら を 立 た て 直 なほ すは、 男子 だんし の 本分 ほんぶん にあらず。 願 ねが はくは 吾等 われら を 此 この 神戦 しんせん に 参加 さんか させ 給 たま へ』 進 すす むこと 一里 いちり 半 はん 許 ばか り、 此処 ここ には 深 ふか き 谷川 たにがは が 横 よこ たはつて 居 ゐ る。 その 幅 はば 殆 ほとん ど 十間 じつけん 許 ばか り、 ピタツと 行詰 ゆきつま つた。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし は 暫 しばら く 此処 ここ に 駒 こま を 繋 つな ぎ、 少憩 せうけい し、 如何 いか にして 此 この 渓谷 たに を 対岸 むかふ に 渡 わた らむかと 協議 けふぎ を 凝 こ らしつつありき。 谷 たに の 向側 むかふがは には、 オベリスクの 如 や うな 帽子 ばうし を 被 かぶ つた 半鐘泥棒的 はんしようどろぼうてき ジヤイアントが 七八人 しちはちにん 、 巨眼 きよがん を 開 ひら き、 大口 おほぐち 開 あ けてカラカラと 打笑 うちわら ひ、 と 指 ゆびさ す。 見 み れば 川底 かはぞこ には、 空地 あきち なき 程 ほど 、 二尺 にしやく 許 ばか りの 鋭利 えいり なる 鎗 やり の 穂先 ほさき が、 幾百千 いくひやくせん ともなく、 土筆 つくし の 生 は えてる 様 やう に 直立 ちよくりつ して 居 ゐ る。 此 この 川 かは に 落 お ちるが 最後 さいご 、 如何 いか なる 肉体 にくたい も 芋刺 いもざし となつて 亡 ほろ びねばならぬシーンを 現 あら はして 居 ゐ る。 太玉命 ふとたまのみこと はカラカラとうち 笑 わら ひ、 と 云 い ふより 早 はや く 一同 いちどう に 目配 めくば せした。 一同 いちどう は 心得 こころえ たりと 馬 うま に 跨 またが り、 太玉命 ふとたまのみこと は 岩彦 いはひこ の 背後 はいご に 飛乗 とびの り、 忽 たちま ち 四五丁 しごちやう 許 ばか り 元 もと 来 きた りし 道 みち に 引返 ひきかへ し、 又 また もや 馬首 ばしゆ を 転 てん じ 鞭 むち をうちつつ、 幅 はば 三間 さんげん 許 ばか りの 谷合 たにあひ を 勢 いきほひ に 任 まか せて 一足飛 いつそくとび に 飛 と び 越 こ えた。 巨大 きよだい の 男 をとこ は 驚 おどろ き 慌 あは て、 雲 くも を 霞 かすみ と 逃帰 にげかへ る。 又 また もや 続 つづ いて 梅彦 うめひこ 、 鷹彦 たかひこ 、 亀彦 かめひこ 、 その 他 た 一同 いちどう 矢庭 やには に 駒 こま に 鞭 むちう つて、 難 なん なく 此 この 谷川 たにがは を 打渡 うちわた り、 後 あと 振返 ふりかへ り 見 み れば 豈 あに 図 はか らむや、 谷川 たにがは らしきものは 一 ひと つもなく、 草 くさ 茫々 ばうばう と 生 は え 茂 しげ る 平野 へいや であつた。 太玉命 ふとたまのみこと 『アハヽヽヽ、 又 また 瞞 だま しをつた、 各方 おのおのがた 能 よ く 気 き を 付 つ けねばなりませぬぞ、 此 この 前途 さき は 仮令 たとへ 如何 いか なる 渓谷 けいこく ありとも 平気 へいき で 渉 わた ることに 致 いた しませうかい。 神変 しんぺん 不可思議 ふかしぎ の 妖術 えうじゆつ を 使 つか ふ 悪魔 あくま の 巣窟 そうくつ ですから、 最前 さいぜん も 吾 わが 妻 つま の 松代姫 まつよひめ 、 及 およ び 娘 むすめ 照妙姫 てるたへひめ と 変 へん じ、 吾 わが 精神 せいしん を 鈍 にぶ らさむと 致 いた せし 魔神 まがみ の 計略 けいりやく 、 飽 あ く 迄 まで も 誑 たば かられない 様 やう に 気 き を 付 つ けて 参 まゐ りませう』 と 先 さき に 立 た つて 進 すす み 行 ゆ く。 一同 いちどう は 馬 うま を 傍 かたはら の 樹木 じゆもく に 繋 つな ぎ、 山 やま と 山 やま との 渓道 たにみち を、 宣伝歌 せんでんか を 歌 うた ひ 乍 なが ら 山 やま 深 ふか く 進 すす むのであつた。 行 ゆ く 事 こと 数里 すうり にして、 荘厳 さうごん なる 城壁 じやうへき の 前 まへ にピタリと 突当 つきあた つた。 朱欄碧瓦 しゆらんへきぐわ の 宏壮 くわうさう なる 大門 おほもん は 建 た てられ、 方尖塔 はうせんたふ の 如 ごと き 冠 かむり を 被 かぶ りたる 四五 しご のジヤイアント 門 もん を 堅 かた く 守 まも つて 居 ゐ る。 太玉命 ふとたまのみこと 一行 いつかう は 忽 たちま ち 門前 もんぜん に 立現 たちあら はれ、 『 吾 わ れこそは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 、 当国 たうごく には 八岐大蛇 やまたをろち 、 金狐 きんこ 、 悪鬼 あくき の 邪霊 じやれい に 憑依 ひようい されたる 鬼雲彦 おにくもひこ 夫妻 ふさい 立籠 たてこも り、 不公平 ふこうへい 極 きは まる 神政 しんせい を 布 し き、 この 顕恩郷 けんおんきやう をして 殆 ほとん ど 地獄 ぢごく の 境地 きやうち と 変 へん ぜしめたるは、 天恵 てんけい を 無視 むし する 大罪 だいざい なれば、 吾 われ は 是 これ より 鬼雲彦 おにくもひこ を 善道 ぜんだう に 帰順 きじゆん せしめむため、 大神 おほかみ の 命 めい を 奉 ほう じて 宣伝 せんでん に 向 むか うたり。 速 すみや かに 此 この 門扉 もんぴ を 開 ひら けよ』 『 暫 しばら くお 待 ま ち 下 くだ さいませ、 あなた 方 がた のエデン 河 がは を 御渡 おわた りありしより 城内 じやうない は 上 うへ を 下 した への 大混雑 だいこんざつ 、 如何 いか にして 貴下等 きから を 満足 まんぞく せしめむやと、 鬼雲彦 おにくもひこ の 大将 たいしやう に 於 お かせられても 千辛万苦 せんしんばんく の 御有様 おんありさま 、 やがて 開門 かいもん のシグナルの 鐘 かね が 響 ひび き 亘 わた りますれば、 それ 迄 まで ゆるゆる 此処 ここ に 御休息 ごきうそく 願 ねが ひたし。 必 かなら ず 必 かなら ず 敵対 てきたい 申 まを す 者 もの は 一柱 ひとはしら も 居 を りませぬ。 御安心 ごあんしん 下 くだ さいませ』 岩彦 いはひこ 『ヤア 各方 おのおのがた 、 あれ 丈 だけ 沢山 たくさん の 敵 てき が 吾々 われわれ に 抵抗 ていかう も 致 いた さず、 各自 めいめい 手槍 てやり を 携 たづさ へ 乍 なが ら 目送 もくそう しつつあるは、 合点 がてん の 行 ゆ かぬ 次第 しだい で 御座 ござ る。 余 あま り 軽々 かるがる しく 進 すす み 過 す ぎて、 四方 しはう 八方 はつぱう より 取囲 とりかこ まれなば、 如何 いかん とも 出来 でき ない 様 やう な 破目 はめ に 陥 おちい るかも 知 し れませぬぞ、 これは 一 ひと つ 考 かんが へねばなりますまい』 と 太玉命 ふとたまのみこと は 先 さき に 立 た つて 進 すす み 行 ゆ く。 鬼雲彦 おにくもひこ の 御殿 ごてん の 前 まへ に 近付 ちかづ く 折 をり しも、 瀟洒 せうしや たる 白木 しらき の 門 もん をサラリと 開 ひら いて 悠々 いういう 現 あら はれ 来 きた る 十数人 じふすうにん の 窈窕嬋研 ようてうせんけん たる 美人 びじん 、 スノーの 如 ごと き 繊手 せんしゆ を 揉 も み 乍 なが ら、 『これはこれは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 様 さま の 御一行様 ごいつかうさま 、 能 よ うマア 遥々 はるばる お 越 こ し 下 くだ さいました。 鬼雲彦 おにくもひこ の 御大将 おんたいしやう の 御命令 ごめいれい に 依 よ りて、 妾 わらは 一同 いちどう はお 迎 むか へに 参 まゐ りました。 訳 わけ の 分 わか らぬ 者共 ものども が 種々 いろいろ と 御無礼 ごぶれい を 働 はたら きましたでせう、 何事 なにごと も 足 た らはぬスレーブの 為 な す 業 わざ と、 広 ひろ き 厚 あつ き 大御心 おほみこころ に 見直 みなほ し 聞直 ききなほ し 下 くだ さいまして、 ゆるゆると 奥殿 おくでん にて 御休息 ごきうそく の 上 うへ 、 尊 たふと き 御話 おはなし をお 聞 き かせ 下 くだ さいませ、 御大将 おんたいしやう も 定 さだ めて 御満足 ごまんぞく の 事 こと と 存 ぞん じます』 宣伝使 せんでんし の 一行 いつかう は、 顕恩城 けんおんじやう の 奥殿 おくでん に 深 ふか く 進 すす み 入 い つた。 山海 さんかい の 珍味 ちんみ は 整然 せいぜん として 並 なら べられてあつた。 美人 びじん の 中 うち の 最年長者 さいねんちやうしや と 見 み ゆる、 眼 まなこ 涼 すず しく、 背 せ の 高 たか き 愛子姫 あいこひめ は 溢 あふ るる 許 ばか りの 愛嬌 あいけう を 湛 たた へ、 『これはこれは 宣伝使 せんでんし 様 さま 、 能 よ うこそ 遠路 ゑんろ の 所 ところ 入 い らせられました。 顕恩郷 けんおんきやう の 名産 めいさん 、 桃 もも の 果実 このみ を 始 はじ め、 種々 いろいろ の 珍 めづ らしき 物 もの を 以 もつ て 馳走 ちそう を 拵 こしら へました、 お 腹 なか が 空 す いたで 御座 ござ いませう、 どうぞ 御遠慮 ごゑんりよ なくお 召 めし あがり 下 くだ さいませ。 果実 このみ の 酒 さけ も 沢山 たくさん 御座 ござ いますれば 御遠慮 ごゑんりよ なく……サアお 酌 しやく をさして 頂 いただ きませう』 音彦 おとひこ 、 駒彦 こまひこ は 頭 かうべ を 左右 さいう に 打振 うちふ り、 黙然 もくねん として 俯 うつ むくのみであつた。 奥 おく の 襖 ふすま を 引開 ひきあ けて 悠々 いういう として 現 あら はれ 来 きた る 鬼雲彦 おにくもひこ 夫婦 ふうふ 、 目鼻 めはな が 無 な かつたら、 万金丹計量 まんきんたんばかり か、 砂 すな つ 原 ぱら の 夕立 ゆふだち か、 山葵卸 わさびおろし の 様 やう な 不景気 ふけいき な 面付 つらつき に、 所々 ところどころ 色 いろ の 変 かは つたアドラスの 様 やう な、 膨 ふく れ 面 づら をニユツと 出 だ しドス 声 ごゑ になつて、 『これはこれは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 様 さま 、 当城 たうじやう は 御聞及 おききおよび の 通 とほり 、 霊主体従 れいしゆたいじゆう を 本義 ほんぎ と 致 いた すバラモン 教 けう の 教 をしへ を 立 た つる 屈強 くつきやう の 場所 ばしよ 、 三五教 あななひけう は 予 かね て 聞 き く 霊主体従 れいしゆたいじゆう の 正教 せいけう にして、 ウラル 教 けう の 如 ごと き 体主霊従 たいしゆれいじう の 邪教 じやけう にあらず、 バラモン 教 けう は 茲 ここ に 鑑 かんがみ る 所 ところ あり、 ウラル 教 けう を 改造 かいざう して、 真正 しんせい の 霊主体従教 れいしゆたいじゆうけう を 樹立 じゆりつ せしもの、 是 こ れ 全 まつた く 天 てん の 時節 じせつ の 到来 たうらい せるもの、 謂 ゐ はば 三五教 あななひけう とバラモン 教 けう は 切 き つても 断 き れぬ、 教理 けうり に 於 おい て、 真 しん のシスター 教 けう であります。 どうぞ 以後 いご は 互 たがひ に 胸襟 きようきん を 開 ひら いて、 相 あひ 提携 ていけい されむ 事 こと を 懇願 こんぐわん 致 いた します』 『 何分 なにぶん 宜 よろ しく、 今後 こんご はシスター 教 けう として 提携 ていけい 致 いた したい。 夫 そ れに 就 つ いては 互 たがひ に 長 ちやう を 採 と り 短 たん を 補 おぎな ひ、 正 せい を 取 と り 偽 ぎ を 削 けづ り、 神聖 しんせい なる 大神 おほかみ の 御心 みこころ に 叶 かな ふべき 教理 けうり を 立 た てたきもので 御座 ござ います。 吾々 われわれ 一行 いつかう 、 当城 たうじやう に 参 まゐ る 途中 とちう に 於 おい て、 妖怪 えうくわい 変化 へんげ の 数多 あまた 出没 しゆつぼつ するは 何故 なにゆゑ ぞ。 バラモン 教 けう は 斯 かく の 如 ごと き 妖術 えうじゆつ を 以 もつ て 世人 せじん を 誑惑 けうわく し、 信仰 しんかう の 道 みち に 引 ひ き 入 い れむとするや、 其 その 意 い の 在 あ る 所 ところ 承 うけたま はりたし』 『アハヽヽヽ、 左様 さやう で 御座 ござ いましたか、 諺 ことわざ にも 云 い ふ、 正法 しやうはふ に 不思議 ふしぎ 無 な し、 不思議 ふしぎ 有 あ るは 正法 しやうはふ にあらず。 此 この メソポタミヤは 世界 せかい の 天国 てんごく 楽土 らくど と 聞 きこ えたれば、 甘味 かんみ 多 おほ き 果物 くだもの に 悪虫 あくちう の 簇生 ぞくせい するが 如 ごと く、 天下 てんか の 悪神 あくがみ 此 この 地 ち に 蝟集 ゐしふ して、 妖邪 えうじや を 行 おこな ふならむ、 決 けつ して 決 けつ して 霊主体従 れいしゆたいじゆう のバラモン 教 けう の 主意 しゆい にあらず。 正邪 せいじや を 混淆 こんかう し、 善悪 ぜんあく を 一視 いつし されては、 聊 いささ か 迷惑 めいわく の 至 いた りで 御座 ござ います。 又 また 中 なか には 教理 けうり を 能 よ く 体得 たいとく せざる 者 もの 多 おほ く、 或 ある パートに 依 よ りては 羊頭 やうとう を 掲 かか げて 狗肉 くにく を 鬻 う る 宣伝使 せんでんし の 絶無 ぜつむ を 保証 ほしよう し 難 がた し。 何教 なにけう と 雖 いへど も、 創立 さうりつ の 際 さい は 総 すべ て、 ハーモニーを 欠 か くもの、 何卒 なにとぞ 時節 じせつ の 力 ちから を 待 ま つてバラモン 教 けう の 真価 しんか を 御覧 ごらん 下 くだ さい。 創立 さうりつ 間 ま もなき 吾 わが 教 をしへ 、 到底 たうてい ノーマルに 適 はま つた 教理 けうり は、 容易 ようい に 完成 くわんせい し 難 がた いのは 三五教 あななひけう の 創立 さうりつ 当初 たうしよ に 於 お けると 同様 どうやう でありませう、 アハヽヽヽ』 『これはこれは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 様 さま 、 能 よ くこそ 御訪問 ごはうもん 下 くだ さいました。 教 をしへ の 話 はなし になりますと 自然 しぜん 堅苦 かたぐる しくなつて、 お 座 ざ が 白 しら けます、 お 話 はなし はゆつくりと 後 あと に 承 うけたま はることに 致 いた しませう。 心許 こころばか りの 馳走 ちそう 、 何卒 なにとぞ 御遠慮 ごゑんりよ なくお 食 あが り 下 くだ さいませ、 決 けつ して 毒 どく などは 入 はい つては 居 を りませぬから…………』 と 答 こた へて、 両女 りやうぢよ は 白扇 はくせん を 開 ひら き、 春野 はるの の 花 はな に 蝶 てふ の 狂 くる ふが 如 ごと く、 身 み も 軽々 かるがる しく 長袖 ちやうしう を 翻 ひるがへ して、 前後左右 ぜんごさいう に 踊 をど り 狂 くる ふた。 顕恩城 けんおんじやう の 上役 うはやく 、 数十人 すうじふにん は 此 この 場 ば に 現 あら はれ、 酒 さけ に 酔 よ ひて、 或 あるひ は 舞 ま ひ、 或 あるひ は 歌 うた ひ、 遂 つひ には 無礼講 ぶれいかう と 変 へん じ、 赤裸 まつぱだか になつて 踊 をど り 狂 くる ふ。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし は 心許 こころゆる さず、 表面 へうめん 酒 さけ に 酔 よ ひ 潰 つぶ れたる 態 てい を 装 よそほ ひ、 他愛 たあい もなく 腮 あご の 紐 ひも を 解 と いて、 或 あるひ は 笑 わら ひ、 或 あるひ は 歌 うた ひ、 余念 よねん なき 体 てい を 装 よそほ うて 居 ゐ た。 不思議 ふしぎ や 数十人 すうじふにん の 顕恩城 けんおんじやう の 上役 うはやく の 面々 めんめん は、 忽 たちま ち 黒血 くろち を 吐 は き、 目 め を 剥 む き、 鼻水 はなみづ を 垂 た らし、 さしもに 広 ひろ き 殿内 でんない を、 呻吟 うめき の 声 こゑ と 諸共 もろとも に、 のたうち 廻 まは り、 顔色 がんしよく 或 あるひ は 青 あを く、 或 あるひ は 黒 くろ く、 赤 あか く、 苦悶 くもん の 息 いき を 嵐 あらし の 如 ごと く 吹 ふ き 立 た てた。 十六人 じふろくにん の 美人 びじん は、 てんでに 襷 たすき を 十文字 じふもんじ にあやどりて、 人々 ひとびと の 介抱 かいほう に 従事 じゆうじ した。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし もお 附合 つきあひ に、 苦悶 くもん の 体 てい を 装 よそほ ひ、 縦横無尽 じうわうむじん に、 『アハヽヽヽ、 汝 なんぢ 太玉命 ふとたまのみこと 、 吾 わが 計略 けいりやく にかかり、 能 よ くも 斃 へた ばつたな、 口汚 くちぎたな き 宣伝使 せんでんし 、 毒 どく と 知 し らずに 調子 てうし に 乗 の つて、 命 いのち を 棄 す つる 愚 おろか さよ。 吁 ああ 、 さり 乍 なが ら 味方 みかた の 強者 つはもの を 数多 あまた 殺 ころ すは 残念 ざんねん なれど、 斯 かく の 如 ごと き 豪傑 がうけつ を 倒 たふ すには、 多少 たせう の 犠牲 ぎせい は 免 まぬが れざる 所 ところ 、 ……ヤアヤア 数多 あまた の 家来 けらい 共 ども 、 汝等 なんぢら は 毒酒 どくしゆ に 酔 よ ひ 今 いま 生命 いのち を 棄 す つると 雖 いへど も、 バラモン 教 けう の 神力 しんりき に 依 よ つて、 栄光 さかえ と 歓喜 よろこび とに 充 み てる 天国 てんごく に 救 すく はれ、 永遠 えいゑん にバラモンの 守 まも り 神 がみ となるべきステーヂなれば 心残 こころのこ さず 帰幽 きいう 致 いた せ、 ……ヤア 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 、 予 よ が 身変 しんぺん 不思議 ふしぎ の 神術 かむわざ には 恐 おそ れ 入 い つたか、 最早 もはや 叶 かな はぬ 全身 ぜんしん に 廻 まは つた 毒酒 どくしゆ の 勢 いきほひ 、 ワツハヽヽヽヽ 苛 いぢら しい 者 もの だなア』 『ヤア 汝 なんぢ こそは 悪逆無道 あくぎやくぶだう の 鬼雲彦 おにくもひこ 、 前生 ぜんせい に 於 おい ては 竜宮城 りうぐうじやう に 仕 つか へ、 神国別 かみくにわけ の 部下 ぶか とならむとして、 花森彦命 はなもりひこのみこと に 妨 さまた げられ、 是非 ぜひ なく 鬼城山 きじやうざん の 棒振彦 ぼうふりひこ が 砦 とりで に 参加 さんか し、 神罰 しんばつ を 蒙 かうむ つて 帰幽 きいう したる 悪魔 あくま の 再来 さいらい 、 復 ふたた び 鬼雲彦 おにくもひこ と 現 あら はれて、 この 顕恩郷 けんおんきやう に 城砦 じやうさい を 構 かま へ、 天下 てんか を 紊 みだ さむとする 悪魔 あくま の 帳本 ちやうほん 、 思 おも ひ 知 し つたか、 妾 わらは 十六人 じふろくにん の 手弱女 たよわめ は、 神素盞嗚 かむすさのを の 大神 おほかみ の 密使 みつし として、 汝 なんぢ が 身辺 しんぺん に 仕 つか へ、 時機 じき を 待 ま ちつつありしを 悟 さと らざりしか、 城内 じやうない の 豪 がう の 者 もの は 残 のこ らず、 汝 なんぢ の 計略 けいりやく の 毒酒 どくしゆ に 酔 よ ひて、 最早 もはや 命 めい 旦夕 たんせき に 迫 せま る。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし には、 清酒 せいしゆ を 与 あた へ、 元気 げんき 益々 ますます 旺盛 わうせい となり、 一騎当千 いつきたうせん のヒーロー 豪傑 がうけつ 、 最早 もはや 斯 か くなる 上 うへ は 遁 のが るるに 由 よし なし、 汝 なんぢ 速 すみやか に 前非 ぜんぴ を 悔 く いて 三五教 あななひけう に 従 したが へよ…… 返答 へんたふ 如何 いか に』 と 詰 つ めかくる。 鬼雲彦 おにくもひこ は 此 こ は 叶 かな はじと、 夫婦 ふうふ 手 て に 手 て を 執 と り、 高殿 たかどの より 眼下 がんか の 掘 ほり を 目 め がけて、 ザンブと 許 ばか り 飛込 とびこ んだ。 パツと 立 た ち 上 あが る 水煙 みづけぶり 、 見 み るも 恐 おそ ろしき 二匹 にひき の 大蛇 をろち となつて 雲 くも を 起 おこ し、 雨 あめ を 呼 よ び、 風 かぜ に 乗 じやう じ、 東方 とうはう 波斯 ペルシヤ の 天 てん を 目 め がけて、 蜒々 えんえん として 空中 くうちう を 泳 およ ぐが 如 ごと く 姿 すがた を 隠 かく した。 『 妾 わらは はコーカス 山 ざん に 現 あ れませる、 神素盞嗚尊 かむすさのをのみこと の 娘 むすめ 、 愛子姫 あいこひめ 、 幾代姫 いくよひめ 、 五十子姫 いそこひめ 、 梅子姫 うめこひめ 、 英子姫 ひでこひめ 、 菊子姫 きくこひめ 、 君子姫 きみこひめ 、 末子姫 すゑこひめ の 八人 はちにん 姉妹 けうだい にて 侯 さふらふ 、 これなる 八人 はちにん の 乙女 をとめ は 妾 わらは の 侍女 じじよ にして、 浅子姫 あさこひめ 、 岩子姫 いはこひめ 、 今子姫 いまこひめ 、 宇豆姫 うづひめ 、 悦子姫 よしこひめ 、 岸子姫 きしこひめ 、 清子姫 きよこひめ 、 捨子姫 すてこひめ と 申 まを す 者 もの 、 バラモン 教 けう の 勢力 せいりよく 旺盛 わうせい にして、 天下 てんか の 人民 じんみん を 苦 くる しめ、 邪教 じやけう を 開 ひら き 生成化育 せいせいくわいく の 惟神 かむながら の 大道 だいだう を 毀損 きそん する 事 こと 、 日 ひ に 月 つき に 甚 はなはだ しきを 以 もつ て、 吾 あが 父 ちち 素盞嗚大神 すさのをのおほかみ は、 妾 わらは 八人 はちにん の 姉妹 けうだい に 命 めい じ、 各 おのおの 身 み を 窶 やつ し、 或 あるひ は 彼 かれ が 部下 ぶか に 捕 とら へられ、 或 あるひ は 顕恩郷 けんおんきやう に 踏迷 ふみまよ ひたる 如 ごと き 装 よそほ ひをなして 此 この 城内 じやうない に 運 はこ び 入 い れられ、 悪魔 あくま 退治 たいぢ の 時機 じき を 待 ま ちつつありしに、 天 てん の 時 とき 到 いた りて 太玉命 ふとたまのみこと は、 父 ちち の 命 めい を 奉 ほう じ 当城 たうじやう に 現 あら はれ 給 たま ひしも、 全 まつた く 吾父 わがちち の 水 みづ も 漏 も らさぬ 御経綸 おしぐみ 、 又 また 八人 はちにん の 侍女 じじよ は、 今迄 いままで 鬼雲彦 おにくもひこ の 側 そば 近 ちか く 仕 つか へたるバラモン 教 けう の 信徒 しんと なりしが、 妾達 わらはたち が 昼夜 ちうや の 感化 かんくわ に 依 よ りて、 衷心 ちうしん より 三五教 あななひけう の 教 をしへ を 奉 ほう ずるに 至 いた りし 者 もの 、 最早 もはや 変心 へんしん するの 虞 おそれ なし。 太玉命 ふとたまのみこと の 宣伝使 せんでんし よ、 彼等 かれら 八人 はちにん の 侍女 じじよ を 妾 わらは の 如 ごと く 愛 あい し 給 たま ひて、 神業 しんげふ に 参加 さんか せしめられよ』 『 吁 ああ 、 宏遠 くわうゑん なるかな、 大神 おほかみ の 御経綸 おしぐみ 、 吾等 われら 人心小智 じんしんせうち の 窺知 きち すべき 所 ところ にあらず。 大神 おほかみ は 最愛 さいあい の 御娘子 おむすめご を 顕恩郷 けんおんきやう に 乗込 のりこ ましめ 置 お き 乍 なが ら、 吾 わ れに 向 むか つて 一言 ひとこと も 漏 も らし 給 たま はず、 顕恩郷 けんおんきやう に 進 すす めと 云 い ふ 御託宣 ごたくせん 、 今 いま に 及 およ んで 大神 おほかみ の 御神慮 ごしんりよ は 釈然 しやくぜん として 解 と けたり。 吁 ああ 、 何事 なにごと も 人智 じんち を 棄 す て、 神 かみ の 命 めい のまにまに 従 したが ふべしとは 此 この 事 こと なるか、 アヽ 有難 ありがた し、 辱 かたじけ なし』 とコーカス 山 ざん の 方 はう に 向 むか つて、 落涙 らくるい し 乍 なが ら 手 て を 合 あは せ 神言 かみごと を 奏上 そうじやう しける。 六人 ろくにん の 宣伝使 せんでんし を 始 はじ め、 十六人 じふろくにん の 女性 ぢよせい は、 コーカス 山 ざん に 向 むか つて 両手 りやうて を 合 あは し、 太玉命 ふとたまのみこと と 共 とも に 天津祝詞 あまつのりと を 奏上 そうじやう した。 忽 たちま ち 何処 いづく ともなく、 馥郁 ふくいく たる 芳香 はうかう 四辺 しへん を 包 つつ み、 百千 ひやくせん の 音楽 おんがく 嚠喨 りうりやう として 響 ひび き 渡 わた り、 紫 むらさき の 雲 くも 天空 てんくう より 此 この 場 ば に 下 くだ り 来 きた り、 容色 ようしよく 端麗 たんれい なる 女神 めがみ の 姿 すがた 、 中空 ちうくう に 忽然 こつぜん として 現 あら はれ、 『われは 妙音 めうおん 菩薩 ぼさつ なり、 汝 なんぢ が 行手 ゆくて を 守 まも らむ、 益々 ますます 勇気 ゆうき を 励 はげ まし 神業 しんげふ に 参加 さんか せよ。 また、 安彦 やすひこ 、 国彦 くにひこ 、 道彦 みちひこ を 始 はじ め、 田加彦 たかひこ 、 百舌彦 もずひこ の 五人 ごにん は、 一旦 いつたん エデン 河 がは の 濁流 だくりう に 溺 おぼ れて 帰幽 きいう せりと 雖 いへど も、 未 ま だ 宿世 しゆくせ の 因縁 いんねん 尽 つ きず、 イヅの 河辺 かはべ に 於 おい て、 汝等 なんぢら に 邂逅 かいこう せば 彼 かれ も 亦 また 再 ふたた び 神業 しんげふ に 参加 さんか するを 得 え む。 一時 いちじ も 早 はや く、 太玉命 ふとたまのみこと は 本城 ほんじやう に 留 とど まり、 愛子姫 あいこひめ 浅子姫 あさこひめ は 太玉命 ふとたまのみこと の 身辺 しんぺん を 保護 ほご し、 其 その 他 た の 宣伝使 せんでんし と 女人 めがみ はエデン 河 がは を 渡 わた りて、 イヅ 河 がは に 向 むか へ、 ゆめゆめ 疑 うたが ふ 事 こと 勿 なか れ』.

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株式會社 經營戰略室: 2014年8月アーカイブ

たせう 現代仮名遣い

太玉命 ふとたまのみこと は 路傍 ろばう の 岩 いは に 腰打掛 こしうちか け、 天津祝詞 あまつのりと を 声低 こゑびく に 奏上 そうじやう しつつあつた。 百鳥 ももどり の 声 こゑ は 遠近 ゑんきん の 林 はやし に 聞 きこ え 始 はじ めた。 東 ひがし の 空 そら はほんのりとして 暁 あかつき の 色 いろ 刻々 こくこく さえて 来 き た。 数多 あまた の 魔神 まがみ の 声 こゑ は 森 もり の 彼方 あなた にザワザワと 聞 きこ え 来 きた る。 油断 ゆだん ならじとキツト 身構 みがまへ する 折 をり しもあれ、 馬 うま の 蹄 ひづめ の 音 おと いと 高 たか く、 岩彦 いはひこ 、 梅彦 うめひこ 、 音彦 おとひこ 、 亀彦 かめひこ 、 駒彦 こまひこ 、 鷹彦 たかひこ は 矢 や を 射 い る 如 ごと く 此 この 場 ば に 馳来 はせきた り、 太玉命 ふとたまのみこと に 向 むか つて、 岩彦 いはひこ 『ヤア 貴下 きか は 太玉命 ふとたまのみこと の 宣伝使 せんでんし 、 私等 わたくしら はフサの 都 みやこ に 於 おい て、 日 ひ の 出別神 でわけのかみ の 命 めい に 依 よ り、 貴下 きか と 共 とも に 顕恩郷 けんおんきやう を 言向和 ことむけやは さむと、 エデン 河 がは の 濁流 だくりう を 渡 わた り、 漸 やうや く 此処 ここ に 走 は せ 参 さん じたり、 一行 いつかう の 人々 ひとびと は 如何 いかが なりしか』 太玉命 ふとたまのみこと 『ヤア 思 おも ひも 寄 よ らぬ 貴下等 きから の 御入来 ごじふらい 、 いよいよこれより 敵 てき の 牙城 がじやう に 唯一人 ただひとり 進撃 しんげき せむとする 場合 ばあひ で 御座 ござ る。 斯 かく の 如 ごと き 曲神 まがかみ の 砦 とりで を 言向 ことむ け 和 やは すは 吾 われ 一人 ひとり にて 充分 じゆうぶん なり。 折角 せつかく の 御出馬 ごしゆつば なれど、 貴下 きか は 速 すみや かにフサの 都 みやこ に 引返 ひきかへ し、 夫々 それぞれ の 神業 しんげふ に 就 つ かせられたし』 岩彦 いはひこ 『それはあまり 無謀 むぼう の 極 きはみ と 申 まを すもの、 吾々 われわれ は 折角 せつかく 山川 さんせん を 渡 わた り 漸 やうや く 此処 ここ に 立向 たちむか ひ、 目前 もくぜん に 敵 てき を 見 み ながら 空 むな しく 駒 こま の 頭 かしら を 立 た て 直 なほ すは、 男子 だんし の 本分 ほんぶん にあらず。 願 ねが はくは 吾等 われら を 此 この 神戦 しんせん に 参加 さんか させ 給 たま へ』 進 すす むこと 一里 いちり 半 はん 許 ばか り、 此処 ここ には 深 ふか き 谷川 たにがは が 横 よこ たはつて 居 ゐ る。 その 幅 はば 殆 ほとん ど 十間 じつけん 許 ばか り、 ピタツと 行詰 ゆきつま つた。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし は 暫 しばら く 此処 ここ に 駒 こま を 繋 つな ぎ、 少憩 せうけい し、 如何 いか にして 此 この 渓谷 たに を 対岸 むかふ に 渡 わた らむかと 協議 けふぎ を 凝 こ らしつつありき。 谷 たに の 向側 むかふがは には、 オベリスクの 如 や うな 帽子 ばうし を 被 かぶ つた 半鐘泥棒的 はんしようどろぼうてき ジヤイアントが 七八人 しちはちにん 、 巨眼 きよがん を 開 ひら き、 大口 おほぐち 開 あ けてカラカラと 打笑 うちわら ひ、 と 指 ゆびさ す。 見 み れば 川底 かはぞこ には、 空地 あきち なき 程 ほど 、 二尺 にしやく 許 ばか りの 鋭利 えいり なる 鎗 やり の 穂先 ほさき が、 幾百千 いくひやくせん ともなく、 土筆 つくし の 生 は えてる 様 やう に 直立 ちよくりつ して 居 ゐ る。 此 この 川 かは に 落 お ちるが 最後 さいご 、 如何 いか なる 肉体 にくたい も 芋刺 いもざし となつて 亡 ほろ びねばならぬシーンを 現 あら はして 居 ゐ る。 太玉命 ふとたまのみこと はカラカラとうち 笑 わら ひ、 と 云 い ふより 早 はや く 一同 いちどう に 目配 めくば せした。 一同 いちどう は 心得 こころえ たりと 馬 うま に 跨 またが り、 太玉命 ふとたまのみこと は 岩彦 いはひこ の 背後 はいご に 飛乗 とびの り、 忽 たちま ち 四五丁 しごちやう 許 ばか り 元 もと 来 きた りし 道 みち に 引返 ひきかへ し、 又 また もや 馬首 ばしゆ を 転 てん じ 鞭 むち をうちつつ、 幅 はば 三間 さんげん 許 ばか りの 谷合 たにあひ を 勢 いきほひ に 任 まか せて 一足飛 いつそくとび に 飛 と び 越 こ えた。 巨大 きよだい の 男 をとこ は 驚 おどろ き 慌 あは て、 雲 くも を 霞 かすみ と 逃帰 にげかへ る。 又 また もや 続 つづ いて 梅彦 うめひこ 、 鷹彦 たかひこ 、 亀彦 かめひこ 、 その 他 た 一同 いちどう 矢庭 やには に 駒 こま に 鞭 むちう つて、 難 なん なく 此 この 谷川 たにがは を 打渡 うちわた り、 後 あと 振返 ふりかへ り 見 み れば 豈 あに 図 はか らむや、 谷川 たにがは らしきものは 一 ひと つもなく、 草 くさ 茫々 ばうばう と 生 は え 茂 しげ る 平野 へいや であつた。 太玉命 ふとたまのみこと 『アハヽヽヽ、 又 また 瞞 だま しをつた、 各方 おのおのがた 能 よ く 気 き を 付 つ けねばなりませぬぞ、 此 この 前途 さき は 仮令 たとへ 如何 いか なる 渓谷 けいこく ありとも 平気 へいき で 渉 わた ることに 致 いた しませうかい。 神変 しんぺん 不可思議 ふかしぎ の 妖術 えうじゆつ を 使 つか ふ 悪魔 あくま の 巣窟 そうくつ ですから、 最前 さいぜん も 吾 わが 妻 つま の 松代姫 まつよひめ 、 及 およ び 娘 むすめ 照妙姫 てるたへひめ と 変 へん じ、 吾 わが 精神 せいしん を 鈍 にぶ らさむと 致 いた せし 魔神 まがみ の 計略 けいりやく 、 飽 あ く 迄 まで も 誑 たば かられない 様 やう に 気 き を 付 つ けて 参 まゐ りませう』 と 先 さき に 立 た つて 進 すす み 行 ゆ く。 一同 いちどう は 馬 うま を 傍 かたはら の 樹木 じゆもく に 繋 つな ぎ、 山 やま と 山 やま との 渓道 たにみち を、 宣伝歌 せんでんか を 歌 うた ひ 乍 なが ら 山 やま 深 ふか く 進 すす むのであつた。 行 ゆ く 事 こと 数里 すうり にして、 荘厳 さうごん なる 城壁 じやうへき の 前 まへ にピタリと 突当 つきあた つた。 朱欄碧瓦 しゆらんへきぐわ の 宏壮 くわうさう なる 大門 おほもん は 建 た てられ、 方尖塔 はうせんたふ の 如 ごと き 冠 かむり を 被 かぶ りたる 四五 しご のジヤイアント 門 もん を 堅 かた く 守 まも つて 居 ゐ る。 太玉命 ふとたまのみこと 一行 いつかう は 忽 たちま ち 門前 もんぜん に 立現 たちあら はれ、 『 吾 わ れこそは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 、 当国 たうごく には 八岐大蛇 やまたをろち 、 金狐 きんこ 、 悪鬼 あくき の 邪霊 じやれい に 憑依 ひようい されたる 鬼雲彦 おにくもひこ 夫妻 ふさい 立籠 たてこも り、 不公平 ふこうへい 極 きは まる 神政 しんせい を 布 し き、 この 顕恩郷 けんおんきやう をして 殆 ほとん ど 地獄 ぢごく の 境地 きやうち と 変 へん ぜしめたるは、 天恵 てんけい を 無視 むし する 大罪 だいざい なれば、 吾 われ は 是 これ より 鬼雲彦 おにくもひこ を 善道 ぜんだう に 帰順 きじゆん せしめむため、 大神 おほかみ の 命 めい を 奉 ほう じて 宣伝 せんでん に 向 むか うたり。 速 すみや かに 此 この 門扉 もんぴ を 開 ひら けよ』 『 暫 しばら くお 待 ま ち 下 くだ さいませ、 あなた 方 がた のエデン 河 がは を 御渡 おわた りありしより 城内 じやうない は 上 うへ を 下 した への 大混雑 だいこんざつ 、 如何 いか にして 貴下等 きから を 満足 まんぞく せしめむやと、 鬼雲彦 おにくもひこ の 大将 たいしやう に 於 お かせられても 千辛万苦 せんしんばんく の 御有様 おんありさま 、 やがて 開門 かいもん のシグナルの 鐘 かね が 響 ひび き 亘 わた りますれば、 それ 迄 まで ゆるゆる 此処 ここ に 御休息 ごきうそく 願 ねが ひたし。 必 かなら ず 必 かなら ず 敵対 てきたい 申 まを す 者 もの は 一柱 ひとはしら も 居 を りませぬ。 御安心 ごあんしん 下 くだ さいませ』 岩彦 いはひこ 『ヤア 各方 おのおのがた 、 あれ 丈 だけ 沢山 たくさん の 敵 てき が 吾々 われわれ に 抵抗 ていかう も 致 いた さず、 各自 めいめい 手槍 てやり を 携 たづさ へ 乍 なが ら 目送 もくそう しつつあるは、 合点 がてん の 行 ゆ かぬ 次第 しだい で 御座 ござ る。 余 あま り 軽々 かるがる しく 進 すす み 過 す ぎて、 四方 しはう 八方 はつぱう より 取囲 とりかこ まれなば、 如何 いかん とも 出来 でき ない 様 やう な 破目 はめ に 陥 おちい るかも 知 し れませぬぞ、 これは 一 ひと つ 考 かんが へねばなりますまい』 と 太玉命 ふとたまのみこと は 先 さき に 立 た つて 進 すす み 行 ゆ く。 鬼雲彦 おにくもひこ の 御殿 ごてん の 前 まへ に 近付 ちかづ く 折 をり しも、 瀟洒 せうしや たる 白木 しらき の 門 もん をサラリと 開 ひら いて 悠々 いういう 現 あら はれ 来 きた る 十数人 じふすうにん の 窈窕嬋研 ようてうせんけん たる 美人 びじん 、 スノーの 如 ごと き 繊手 せんしゆ を 揉 も み 乍 なが ら、 『これはこれは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 様 さま の 御一行様 ごいつかうさま 、 能 よ うマア 遥々 はるばる お 越 こ し 下 くだ さいました。 鬼雲彦 おにくもひこ の 御大将 おんたいしやう の 御命令 ごめいれい に 依 よ りて、 妾 わらは 一同 いちどう はお 迎 むか へに 参 まゐ りました。 訳 わけ の 分 わか らぬ 者共 ものども が 種々 いろいろ と 御無礼 ごぶれい を 働 はたら きましたでせう、 何事 なにごと も 足 た らはぬスレーブの 為 な す 業 わざ と、 広 ひろ き 厚 あつ き 大御心 おほみこころ に 見直 みなほ し 聞直 ききなほ し 下 くだ さいまして、 ゆるゆると 奥殿 おくでん にて 御休息 ごきうそく の 上 うへ 、 尊 たふと き 御話 おはなし をお 聞 き かせ 下 くだ さいませ、 御大将 おんたいしやう も 定 さだ めて 御満足 ごまんぞく の 事 こと と 存 ぞん じます』 宣伝使 せんでんし の 一行 いつかう は、 顕恩城 けんおんじやう の 奥殿 おくでん に 深 ふか く 進 すす み 入 い つた。 山海 さんかい の 珍味 ちんみ は 整然 せいぜん として 並 なら べられてあつた。 美人 びじん の 中 うち の 最年長者 さいねんちやうしや と 見 み ゆる、 眼 まなこ 涼 すず しく、 背 せ の 高 たか き 愛子姫 あいこひめ は 溢 あふ るる 許 ばか りの 愛嬌 あいけう を 湛 たた へ、 『これはこれは 宣伝使 せんでんし 様 さま 、 能 よ うこそ 遠路 ゑんろ の 所 ところ 入 い らせられました。 顕恩郷 けんおんきやう の 名産 めいさん 、 桃 もも の 果実 このみ を 始 はじ め、 種々 いろいろ の 珍 めづ らしき 物 もの を 以 もつ て 馳走 ちそう を 拵 こしら へました、 お 腹 なか が 空 す いたで 御座 ござ いませう、 どうぞ 御遠慮 ごゑんりよ なくお 召 めし あがり 下 くだ さいませ。 果実 このみ の 酒 さけ も 沢山 たくさん 御座 ござ いますれば 御遠慮 ごゑんりよ なく……サアお 酌 しやく をさして 頂 いただ きませう』 音彦 おとひこ 、 駒彦 こまひこ は 頭 かうべ を 左右 さいう に 打振 うちふ り、 黙然 もくねん として 俯 うつ むくのみであつた。 奥 おく の 襖 ふすま を 引開 ひきあ けて 悠々 いういう として 現 あら はれ 来 きた る 鬼雲彦 おにくもひこ 夫婦 ふうふ 、 目鼻 めはな が 無 な かつたら、 万金丹計量 まんきんたんばかり か、 砂 すな つ 原 ぱら の 夕立 ゆふだち か、 山葵卸 わさびおろし の 様 やう な 不景気 ふけいき な 面付 つらつき に、 所々 ところどころ 色 いろ の 変 かは つたアドラスの 様 やう な、 膨 ふく れ 面 づら をニユツと 出 だ しドス 声 ごゑ になつて、 『これはこれは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 様 さま 、 当城 たうじやう は 御聞及 おききおよび の 通 とほり 、 霊主体従 れいしゆたいじゆう を 本義 ほんぎ と 致 いた すバラモン 教 けう の 教 をしへ を 立 た つる 屈強 くつきやう の 場所 ばしよ 、 三五教 あななひけう は 予 かね て 聞 き く 霊主体従 れいしゆたいじゆう の 正教 せいけう にして、 ウラル 教 けう の 如 ごと き 体主霊従 たいしゆれいじう の 邪教 じやけう にあらず、 バラモン 教 けう は 茲 ここ に 鑑 かんがみ る 所 ところ あり、 ウラル 教 けう を 改造 かいざう して、 真正 しんせい の 霊主体従教 れいしゆたいじゆうけう を 樹立 じゆりつ せしもの、 是 こ れ 全 まつた く 天 てん の 時節 じせつ の 到来 たうらい せるもの、 謂 ゐ はば 三五教 あななひけう とバラモン 教 けう は 切 き つても 断 き れぬ、 教理 けうり に 於 おい て、 真 しん のシスター 教 けう であります。 どうぞ 以後 いご は 互 たがひ に 胸襟 きようきん を 開 ひら いて、 相 あひ 提携 ていけい されむ 事 こと を 懇願 こんぐわん 致 いた します』 『 何分 なにぶん 宜 よろ しく、 今後 こんご はシスター 教 けう として 提携 ていけい 致 いた したい。 夫 そ れに 就 つ いては 互 たがひ に 長 ちやう を 採 と り 短 たん を 補 おぎな ひ、 正 せい を 取 と り 偽 ぎ を 削 けづ り、 神聖 しんせい なる 大神 おほかみ の 御心 みこころ に 叶 かな ふべき 教理 けうり を 立 た てたきもので 御座 ござ います。 吾々 われわれ 一行 いつかう 、 当城 たうじやう に 参 まゐ る 途中 とちう に 於 おい て、 妖怪 えうくわい 変化 へんげ の 数多 あまた 出没 しゆつぼつ するは 何故 なにゆゑ ぞ。 バラモン 教 けう は 斯 かく の 如 ごと き 妖術 えうじゆつ を 以 もつ て 世人 せじん を 誑惑 けうわく し、 信仰 しんかう の 道 みち に 引 ひ き 入 い れむとするや、 其 その 意 い の 在 あ る 所 ところ 承 うけたま はりたし』 『アハヽヽヽ、 左様 さやう で 御座 ござ いましたか、 諺 ことわざ にも 云 い ふ、 正法 しやうはふ に 不思議 ふしぎ 無 な し、 不思議 ふしぎ 有 あ るは 正法 しやうはふ にあらず。 此 この メソポタミヤは 世界 せかい の 天国 てんごく 楽土 らくど と 聞 きこ えたれば、 甘味 かんみ 多 おほ き 果物 くだもの に 悪虫 あくちう の 簇生 ぞくせい するが 如 ごと く、 天下 てんか の 悪神 あくがみ 此 この 地 ち に 蝟集 ゐしふ して、 妖邪 えうじや を 行 おこな ふならむ、 決 けつ して 決 けつ して 霊主体従 れいしゆたいじゆう のバラモン 教 けう の 主意 しゆい にあらず。 正邪 せいじや を 混淆 こんかう し、 善悪 ぜんあく を 一視 いつし されては、 聊 いささ か 迷惑 めいわく の 至 いた りで 御座 ござ います。 又 また 中 なか には 教理 けうり を 能 よ く 体得 たいとく せざる 者 もの 多 おほ く、 或 ある パートに 依 よ りては 羊頭 やうとう を 掲 かか げて 狗肉 くにく を 鬻 う る 宣伝使 せんでんし の 絶無 ぜつむ を 保証 ほしよう し 難 がた し。 何教 なにけう と 雖 いへど も、 創立 さうりつ の 際 さい は 総 すべ て、 ハーモニーを 欠 か くもの、 何卒 なにとぞ 時節 じせつ の 力 ちから を 待 ま つてバラモン 教 けう の 真価 しんか を 御覧 ごらん 下 くだ さい。 創立 さうりつ 間 ま もなき 吾 わが 教 をしへ 、 到底 たうてい ノーマルに 適 はま つた 教理 けうり は、 容易 ようい に 完成 くわんせい し 難 がた いのは 三五教 あななひけう の 創立 さうりつ 当初 たうしよ に 於 お けると 同様 どうやう でありませう、 アハヽヽヽ』 『これはこれは 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 様 さま 、 能 よ くこそ 御訪問 ごはうもん 下 くだ さいました。 教 をしへ の 話 はなし になりますと 自然 しぜん 堅苦 かたぐる しくなつて、 お 座 ざ が 白 しら けます、 お 話 はなし はゆつくりと 後 あと に 承 うけたま はることに 致 いた しませう。 心許 こころばか りの 馳走 ちそう 、 何卒 なにとぞ 御遠慮 ごゑんりよ なくお 食 あが り 下 くだ さいませ、 決 けつ して 毒 どく などは 入 はい つては 居 を りませぬから…………』 と 答 こた へて、 両女 りやうぢよ は 白扇 はくせん を 開 ひら き、 春野 はるの の 花 はな に 蝶 てふ の 狂 くる ふが 如 ごと く、 身 み も 軽々 かるがる しく 長袖 ちやうしう を 翻 ひるがへ して、 前後左右 ぜんごさいう に 踊 をど り 狂 くる ふた。 顕恩城 けんおんじやう の 上役 うはやく 、 数十人 すうじふにん は 此 この 場 ば に 現 あら はれ、 酒 さけ に 酔 よ ひて、 或 あるひ は 舞 ま ひ、 或 あるひ は 歌 うた ひ、 遂 つひ には 無礼講 ぶれいかう と 変 へん じ、 赤裸 まつぱだか になつて 踊 をど り 狂 くる ふ。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし は 心許 こころゆる さず、 表面 へうめん 酒 さけ に 酔 よ ひ 潰 つぶ れたる 態 てい を 装 よそほ ひ、 他愛 たあい もなく 腮 あご の 紐 ひも を 解 と いて、 或 あるひ は 笑 わら ひ、 或 あるひ は 歌 うた ひ、 余念 よねん なき 体 てい を 装 よそほ うて 居 ゐ た。 不思議 ふしぎ や 数十人 すうじふにん の 顕恩城 けんおんじやう の 上役 うはやく の 面々 めんめん は、 忽 たちま ち 黒血 くろち を 吐 は き、 目 め を 剥 む き、 鼻水 はなみづ を 垂 た らし、 さしもに 広 ひろ き 殿内 でんない を、 呻吟 うめき の 声 こゑ と 諸共 もろとも に、 のたうち 廻 まは り、 顔色 がんしよく 或 あるひ は 青 あを く、 或 あるひ は 黒 くろ く、 赤 あか く、 苦悶 くもん の 息 いき を 嵐 あらし の 如 ごと く 吹 ふ き 立 た てた。 十六人 じふろくにん の 美人 びじん は、 てんでに 襷 たすき を 十文字 じふもんじ にあやどりて、 人々 ひとびと の 介抱 かいほう に 従事 じゆうじ した。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし もお 附合 つきあひ に、 苦悶 くもん の 体 てい を 装 よそほ ひ、 縦横無尽 じうわうむじん に、 『アハヽヽヽ、 汝 なんぢ 太玉命 ふとたまのみこと 、 吾 わが 計略 けいりやく にかかり、 能 よ くも 斃 へた ばつたな、 口汚 くちぎたな き 宣伝使 せんでんし 、 毒 どく と 知 し らずに 調子 てうし に 乗 の つて、 命 いのち を 棄 す つる 愚 おろか さよ。 吁 ああ 、 さり 乍 なが ら 味方 みかた の 強者 つはもの を 数多 あまた 殺 ころ すは 残念 ざんねん なれど、 斯 かく の 如 ごと き 豪傑 がうけつ を 倒 たふ すには、 多少 たせう の 犠牲 ぎせい は 免 まぬが れざる 所 ところ 、 ……ヤアヤア 数多 あまた の 家来 けらい 共 ども 、 汝等 なんぢら は 毒酒 どくしゆ に 酔 よ ひ 今 いま 生命 いのち を 棄 す つると 雖 いへど も、 バラモン 教 けう の 神力 しんりき に 依 よ つて、 栄光 さかえ と 歓喜 よろこび とに 充 み てる 天国 てんごく に 救 すく はれ、 永遠 えいゑん にバラモンの 守 まも り 神 がみ となるべきステーヂなれば 心残 こころのこ さず 帰幽 きいう 致 いた せ、 ……ヤア 三五教 あななひけう の 宣伝使 せんでんし 、 予 よ が 身変 しんぺん 不思議 ふしぎ の 神術 かむわざ には 恐 おそ れ 入 い つたか、 最早 もはや 叶 かな はぬ 全身 ぜんしん に 廻 まは つた 毒酒 どくしゆ の 勢 いきほひ 、 ワツハヽヽヽヽ 苛 いぢら しい 者 もの だなア』 『ヤア 汝 なんぢ こそは 悪逆無道 あくぎやくぶだう の 鬼雲彦 おにくもひこ 、 前生 ぜんせい に 於 おい ては 竜宮城 りうぐうじやう に 仕 つか へ、 神国別 かみくにわけ の 部下 ぶか とならむとして、 花森彦命 はなもりひこのみこと に 妨 さまた げられ、 是非 ぜひ なく 鬼城山 きじやうざん の 棒振彦 ぼうふりひこ が 砦 とりで に 参加 さんか し、 神罰 しんばつ を 蒙 かうむ つて 帰幽 きいう したる 悪魔 あくま の 再来 さいらい 、 復 ふたた び 鬼雲彦 おにくもひこ と 現 あら はれて、 この 顕恩郷 けんおんきやう に 城砦 じやうさい を 構 かま へ、 天下 てんか を 紊 みだ さむとする 悪魔 あくま の 帳本 ちやうほん 、 思 おも ひ 知 し つたか、 妾 わらは 十六人 じふろくにん の 手弱女 たよわめ は、 神素盞嗚 かむすさのを の 大神 おほかみ の 密使 みつし として、 汝 なんぢ が 身辺 しんぺん に 仕 つか へ、 時機 じき を 待 ま ちつつありしを 悟 さと らざりしか、 城内 じやうない の 豪 がう の 者 もの は 残 のこ らず、 汝 なんぢ の 計略 けいりやく の 毒酒 どくしゆ に 酔 よ ひて、 最早 もはや 命 めい 旦夕 たんせき に 迫 せま る。 七人 しちにん の 宣伝使 せんでんし には、 清酒 せいしゆ を 与 あた へ、 元気 げんき 益々 ますます 旺盛 わうせい となり、 一騎当千 いつきたうせん のヒーロー 豪傑 がうけつ 、 最早 もはや 斯 か くなる 上 うへ は 遁 のが るるに 由 よし なし、 汝 なんぢ 速 すみやか に 前非 ぜんぴ を 悔 く いて 三五教 あななひけう に 従 したが へよ…… 返答 へんたふ 如何 いか に』 と 詰 つ めかくる。 鬼雲彦 おにくもひこ は 此 こ は 叶 かな はじと、 夫婦 ふうふ 手 て に 手 て を 執 と り、 高殿 たかどの より 眼下 がんか の 掘 ほり を 目 め がけて、 ザンブと 許 ばか り 飛込 とびこ んだ。 パツと 立 た ち 上 あが る 水煙 みづけぶり 、 見 み るも 恐 おそ ろしき 二匹 にひき の 大蛇 をろち となつて 雲 くも を 起 おこ し、 雨 あめ を 呼 よ び、 風 かぜ に 乗 じやう じ、 東方 とうはう 波斯 ペルシヤ の 天 てん を 目 め がけて、 蜒々 えんえん として 空中 くうちう を 泳 およ ぐが 如 ごと く 姿 すがた を 隠 かく した。 『 妾 わらは はコーカス 山 ざん に 現 あ れませる、 神素盞嗚尊 かむすさのをのみこと の 娘 むすめ 、 愛子姫 あいこひめ 、 幾代姫 いくよひめ 、 五十子姫 いそこひめ 、 梅子姫 うめこひめ 、 英子姫 ひでこひめ 、 菊子姫 きくこひめ 、 君子姫 きみこひめ 、 末子姫 すゑこひめ の 八人 はちにん 姉妹 けうだい にて 侯 さふらふ 、 これなる 八人 はちにん の 乙女 をとめ は 妾 わらは の 侍女 じじよ にして、 浅子姫 あさこひめ 、 岩子姫 いはこひめ 、 今子姫 いまこひめ 、 宇豆姫 うづひめ 、 悦子姫 よしこひめ 、 岸子姫 きしこひめ 、 清子姫 きよこひめ 、 捨子姫 すてこひめ と 申 まを す 者 もの 、 バラモン 教 けう の 勢力 せいりよく 旺盛 わうせい にして、 天下 てんか の 人民 じんみん を 苦 くる しめ、 邪教 じやけう を 開 ひら き 生成化育 せいせいくわいく の 惟神 かむながら の 大道 だいだう を 毀損 きそん する 事 こと 、 日 ひ に 月 つき に 甚 はなはだ しきを 以 もつ て、 吾 あが 父 ちち 素盞嗚大神 すさのをのおほかみ は、 妾 わらは 八人 はちにん の 姉妹 けうだい に 命 めい じ、 各 おのおの 身 み を 窶 やつ し、 或 あるひ は 彼 かれ が 部下 ぶか に 捕 とら へられ、 或 あるひ は 顕恩郷 けんおんきやう に 踏迷 ふみまよ ひたる 如 ごと き 装 よそほ ひをなして 此 この 城内 じやうない に 運 はこ び 入 い れられ、 悪魔 あくま 退治 たいぢ の 時機 じき を 待 ま ちつつありしに、 天 てん の 時 とき 到 いた りて 太玉命 ふとたまのみこと は、 父 ちち の 命 めい を 奉 ほう じ 当城 たうじやう に 現 あら はれ 給 たま ひしも、 全 まつた く 吾父 わがちち の 水 みづ も 漏 も らさぬ 御経綸 おしぐみ 、 又 また 八人 はちにん の 侍女 じじよ は、 今迄 いままで 鬼雲彦 おにくもひこ の 側 そば 近 ちか く 仕 つか へたるバラモン 教 けう の 信徒 しんと なりしが、 妾達 わらはたち が 昼夜 ちうや の 感化 かんくわ に 依 よ りて、 衷心 ちうしん より 三五教 あななひけう の 教 をしへ を 奉 ほう ずるに 至 いた りし 者 もの 、 最早 もはや 変心 へんしん するの 虞 おそれ なし。 太玉命 ふとたまのみこと の 宣伝使 せんでんし よ、 彼等 かれら 八人 はちにん の 侍女 じじよ を 妾 わらは の 如 ごと く 愛 あい し 給 たま ひて、 神業 しんげふ に 参加 さんか せしめられよ』 『 吁 ああ 、 宏遠 くわうゑん なるかな、 大神 おほかみ の 御経綸 おしぐみ 、 吾等 われら 人心小智 じんしんせうち の 窺知 きち すべき 所 ところ にあらず。 大神 おほかみ は 最愛 さいあい の 御娘子 おむすめご を 顕恩郷 けんおんきやう に 乗込 のりこ ましめ 置 お き 乍 なが ら、 吾 わ れに 向 むか つて 一言 ひとこと も 漏 も らし 給 たま はず、 顕恩郷 けんおんきやう に 進 すす めと 云 い ふ 御託宣 ごたくせん 、 今 いま に 及 およ んで 大神 おほかみ の 御神慮 ごしんりよ は 釈然 しやくぜん として 解 と けたり。 吁 ああ 、 何事 なにごと も 人智 じんち を 棄 す て、 神 かみ の 命 めい のまにまに 従 したが ふべしとは 此 この 事 こと なるか、 アヽ 有難 ありがた し、 辱 かたじけ なし』 とコーカス 山 ざん の 方 はう に 向 むか つて、 落涙 らくるい し 乍 なが ら 手 て を 合 あは せ 神言 かみごと を 奏上 そうじやう しける。 六人 ろくにん の 宣伝使 せんでんし を 始 はじ め、 十六人 じふろくにん の 女性 ぢよせい は、 コーカス 山 ざん に 向 むか つて 両手 りやうて を 合 あは し、 太玉命 ふとたまのみこと と 共 とも に 天津祝詞 あまつのりと を 奏上 そうじやう した。 忽 たちま ち 何処 いづく ともなく、 馥郁 ふくいく たる 芳香 はうかう 四辺 しへん を 包 つつ み、 百千 ひやくせん の 音楽 おんがく 嚠喨 りうりやう として 響 ひび き 渡 わた り、 紫 むらさき の 雲 くも 天空 てんくう より 此 この 場 ば に 下 くだ り 来 きた り、 容色 ようしよく 端麗 たんれい なる 女神 めがみ の 姿 すがた 、 中空 ちうくう に 忽然 こつぜん として 現 あら はれ、 『われは 妙音 めうおん 菩薩 ぼさつ なり、 汝 なんぢ が 行手 ゆくて を 守 まも らむ、 益々 ますます 勇気 ゆうき を 励 はげ まし 神業 しんげふ に 参加 さんか せよ。 また、 安彦 やすひこ 、 国彦 くにひこ 、 道彦 みちひこ を 始 はじ め、 田加彦 たかひこ 、 百舌彦 もずひこ の 五人 ごにん は、 一旦 いつたん エデン 河 がは の 濁流 だくりう に 溺 おぼ れて 帰幽 きいう せりと 雖 いへど も、 未 ま だ 宿世 しゆくせ の 因縁 いんねん 尽 つ きず、 イヅの 河辺 かはべ に 於 おい て、 汝等 なんぢら に 邂逅 かいこう せば 彼 かれ も 亦 また 再 ふたた び 神業 しんげふ に 参加 さんか するを 得 え む。 一時 いちじ も 早 はや く、 太玉命 ふとたまのみこと は 本城 ほんじやう に 留 とど まり、 愛子姫 あいこひめ 浅子姫 あさこひめ は 太玉命 ふとたまのみこと の 身辺 しんぺん を 保護 ほご し、 其 その 他 た の 宣伝使 せんでんし と 女人 めがみ はエデン 河 がは を 渡 わた りて、 イヅ 河 がは に 向 むか へ、 ゆめゆめ 疑 うたが ふ 事 こと 勿 なか れ』.

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凡例|第17巻(辰の巻)|霊界物語

たせう 現代仮名遣い

錐 きり 襄中 のうちう にあれば 必 かなら ず 頴脱 えいだつ し、 空気球 くうきまり に 熱 ねつ を 加 くは ふれば 膨張 ばうちよう して 破裂 はれつ せざれば 止 や まず、 熱烈 ねつれつ なる 信仰 しんかう と 燃 も ゆるが 如 ごと き 希望 きばう と 抱負 はうふ は、 日出雄 ひでを の 肉体 にくたい をかつて 遂 つひ に 大本 おほもと と 云 い ふ 殻 から を 打破 うちやぶ つて 脱出 だつしゆつ せざるを 得 え ざらしめた。 ポンプも 強力 きやうりよく なる 圧迫 あつぱく によつて 滝 たき の 如 ごと く 空中 くうちう に 水柱 みづばしら を 立 た て、 油 あぶら は 圧搾器 あつさくき に 押 おさ へつけられて 滲 し み 出 で る、 僅 わづ かに 五尺 ごしやく の 空殻 くうがい に 宇宙 うちう 我 われ にあり 的 てき の 精魂 せいこん を 宿 やど しその 放出 はうしゆつ を 防 ふせ ぐに 苦心 くしん すること、 ここに 五十年 ごじふねん。 山 やま も 裂 さ けよ、 岩 いは も 飛 と べよ、 天 てん を 地 ち となし、 地 ち を 天 てん となす 日出雄 ひでを が 心中 しんちう の 抱負 はうふ の 一端 いつたん は、 ここに 蒙古入 もうこいり となつて 現 あら はれたのである。 明治 めいぢ 三十一年 さんじふいちねん 以来 いらい 、 教養 けうやう して 来 き た 役員 やくゐん 信徒 しんと の 霊性 れいせい を 一々 いちいち 点検 てんけん すれば、 愚直 ぐちよく と 因循 いんじゆん 固陋 ころう 排他 はいた と 誇大妄想狂 こだいまうさうきやう と 罵詈讒謗 ばりざんばう 等 とう 、 あらゆる 悪徳 あくとく の 暗影 あんえい を 現 あら はすのみにて、 真 しん の 勇 ゆう なく 智 ち なく 愛 あい なく 親 しん なし。 あゝ 斯如 かくのごとく ならば 蜆貝 しじみがひ を 以 も つて 大海 だいかい の 水 みづ を 汲 く み 出 だ し、 その 干 ひ るを 待 ま つが 如 ごと く、 駱駝 らくだ を 針 はり の 穴 あな に 通 とほ すが 如 ごと く、 たとへ 数万年 すうまんねん を 費 つひや すと 雖 いへど も、 その 獲得 くわくとく する 所 ところ は 苦労 くらう と 失敗 しつぱい とにして 寸効 すんかう なきを 看破 かんぱ した 日出雄 ひでを は、 先 ま づ 第一 だいいち に 神 かみ の 島 しま と 聞 きこ えたる 筑紫島 つくしじま に 渡 わた りて 阿蘇 あそ の 噴火口 ふんくわこう を 探 さぐ り、 三韓征伐 さんかんせいばつ に 由緒 ゆいしよ ある 息長帯比女命 おきながたらしひめのみこと の 入浴 にふよく されしと 伝 つた ふる 杖立 つゑたて の 霊泉 れいせん に 心魂 しんこん を 清 きよ め、 志賀瀬川 しがせがは の 清流 せいりう に 禊 みそぎ をなし、 鏡 かがみ の 池 いけ の 清泉 せいせん に 己 おのれ が 姿 すがた を 写 うつ し 眺 なが め、 阿蘇 あそ の 噴煙 ふんえん の 如 ごと く 大気焔 だいきえん を 吐 は き 乍 なが ら 九州一 きうしういち の 都会 とくわい 熊本城外 くまもとじやうぐわい に 立帰 たちかへ るや 否 いな や、 山本権兵衛 やまもとごんべゑ 内閣 ないかく の 出現 しゆつげん 、 東都 とうと の 大震災 だいしんさい 大火災 だいくわさい のいたるに 会 あ ふ。 あゝ 世界 せかい 改善 かいぜん の 狼火 のろし は 天地 てんち の 神霊 しんれい によりて 揚 あ げられたり。 奮起 ふんき すべきは 今 いま なり。 重大 ぢうだい なる 天命 てんめい を 負 お ひ 乍 なが ら、 何 なに を 躊躇 ちうちよ 逡巡 しゆんじゆん するか、 日本男子 やまとをのこ の 生命 せいめい は 何処 いづこ にあるかと、 日出雄 ひでを の 精霊 せいれい は 彼 かれ の 肉体 にくたい を 叱咤 しつた するのであつた。 日出雄 ひでを は 匆々 さうさう として 従者 じゆうしや と 共 とも に 聖地 せいち に 帰 かへ り、 世上 せじやう の 毀誉褒貶 きよはうへん を 度外 どぐわい におき、 一切 いつさい の 因 とらは れより 離 はな れ、 人界 じんかい を 超越 てうゑつ して 愈 いよいよ 神業遂行 しんげふすゐかう の 腸 はら をきめた。 その 結果 けつくわ 、 支那 しな 五大教 ごだいけう の 提携 ていけい となり、 朝鮮 てうせん 普天教 ふてんけう との 提携 ていけい となり、 国際語 こくさいご エスペラントの 宣伝 せんでん となり、 精神的 せいしんてき 世界統一 せかいとういつ の 一歩 いつぽ を 走 はし り 出 だ した。 旧習 きうしふ に 因 とら はれ 不徹底 ふてつてい なる 信仰上 しんかうじやう よつぱらつた 役員 やくゐん 信徒 しんと の 中 なか には、 男 をとこ らしくもない、 蔭 かげ に 潜 ひそ んで、 ブツブツ 小言 こごと を 云 い つてゐるものも 沢山 たくさん に 現 あら はれた。 今迄 いままで 独断的 どくだんてき 排他的 はいたてき 気分 きぶん に 漂 ただよ ひ、 高 たか き 障壁 しやうへき や 深 ふか き 溝渠 こうきよ を 繞 めぐ らしてゐた 大本 おほもと の 信徒 しんと 団体 だんたい も、 此 この 時 とき よりやや 解放 かいはう 気分 きぶん となり、 圏外 けんぐわい の 空気 くうき を 多少 たせう 吸収 きふしう することとなつたのも、 全 まつた く 日出雄 ひでを の 英断的 えいだんてき 行動 かうどう によるものであつた。 開祖 かいそ の 神諭 しんゆ に 曰 いは く、 『 三千世界 さんぜんせかい の 立替立直 たてかへたてなほ し、 天 あま の 岩戸 いはと 開 びら き、 神 かみ は 小 ちひ さい 事 こと は 嫌 きら ひである、 大 おほ きな 事 こと を 致 いた す 神 かみ であるぞよ。 役員 やくゐん 信者 しんじや は 胴 どう 据 す ゑ、 大 おほ きな 腹 はら で 居 を らねば 到底 たうてい 神 かみ の 思惑 おもわく は 立 た たぬぞよ。 サツパリ 世 よ の 洗替 あらひかへ であるから、 小 ちひ さい 事 こと を 申 まう して 居 を つては、 いつ 迄 まで も 世 よ は 開 ひら けぬぞよ。 此 この ものと 思 おも ふて 神 かみ が 綱 つな かけて 引寄 ひきよ して 見 み ても、 心 こころ が 小 ちひ さいから、 肝腎 かんじん の 御用 ごよう の 間 ま に 合 あ はぬぞよ。 誠 まこと のものが 三人 さんにん あつたならば、 三千世界 さんぜんせかい の 大望 たいまう は 成就 じやうじゆ いたすぞよ』 と 示 しめ されてある。 あゝ 偉大 ゐだい なるかな、 高遠 かうゑん なるかな、 神 かみ の 宣示 せんじ よ。 大神 おほかみ の 神示 しんじ を 徹底的 てつていてき に 理解 りかい したる 日出雄 ひでを の 身 み は、 有司 いうし の 誤認 ごにん によつて 極刑 きよくけい 五年 ごねん の 懲役 ちようえき を 云 い ひ 渡 わた され、 大阪控訴院 おほさかこうそゐん に 控訴 こうそ し、 厳正 げんせい なる 裁判 さいばん を 受 う け、 厳重 げんぢう なるその 筋 すぢ の 監視 かんし を 受 う けてゐた。 新聞 しんぶん 雑誌 ざつし の 日々 ひび の 銃先 つつさき 揃 そろ へての 大攻撃 だいこうげき 、 世間 せけん の 非難 ひなん 、 役員 やくゐん 信者 しんじや の 反抗 はんかう 離背 りはい 、 加 くは ふるに 財政 ざいせい の 圧迫 あつぱく 、 かてて 加 くは へて 大国賊 だいこくぞく 、 乱臣賊子 らんしんぞくし 、 大山師 おほやまし 、 大馬鹿者 おほばかもの 、 曰 いは く 何 なに 、 曰 いは く 何 なに 、 あらゆる 悪名 あくめい を 附与 ふよ せられ 天下 てんか 皆 みな 是 こ れ 敵 てき たるの 境涯 きやうがい にあつた。 されど 日出雄 ひでを の 肉体 にくたい は 小 せう なりと 雖 いへど 、 彼 かれ が 心中 しんちう にかかへたる 天下 てんか 救済 きうさい の 抱負 はうふ と 信念 しんねん は 火 ひ も 焼 や く 能 あた はず、 水 みづ も 溺 おぼ らす 能 あた はず、 巨砲 きよはう も 之 これ を 粉砕 ふんさい し 得 え ず、 鬼 おに 、 大蛇 だいぢや 、 虎 とら 、 熊 くま 、 唐獅子 からじし 、 駒 こま 、 数百千 すうひやくせん の 攻撃 こうげき も 意 い に 介 かい するに 足 た らなかつた。 現代人 げんだいじん より 見 み て 如何 いか なる 悲運 ひうん の 域 ゐき に 沈淪 ちんりん するとも 大困難 だいこんなん に 陥 おちい るとも、 その 精神 せいしん を 飜 ひるがへ さず、 強 つよ き 者 もの には 強敵 きやうてき あり、 大 だい なる 器 うつは には 大 だい なる 影 かげ のさすの 見地 けんち に 立 た ち、 寧 むし ろ 之 これ を 壮快 さうくわい となし 天下 てんか を 睥睨 へいげい してゐた。 凡 すべ ての 人間 にんげん には、 何 いづ れも 長所 ちやうしよ と 短所 たんしよ とがある。 各人 かくじん は 各 おのおの 人 ひと の 短所 たんしよ を 見 み て 口 くち を 極 きは めて 非難 ひなん 攻撃 こうげき し、 吾 わが 意 い に 合 あ はざるを 見 み て 罵詈 ばり し 排斥 はいせき するものである。 人 ひと はその 面貌 めんばう の 異 こと なる 如 ごと く 愛善 あいぜん の 徳 とく も 信真 しんしん の 光 ひかり もその 度合 どあひ がある。 従 したが つて 智慧 ちゑ 証覚 しようかく も 優劣等差 いうれつとうさ がある。 おのが 小 ちひ さき 意志 いし に 従 したが はしめむとして、 之 これ に 和 わ するものを 善人 ぜんにん となし、 和 わ せざるものを 悪人 あくにん と 見 み なすのは 凡人 ぼんじん の 常 つね である。 大本 おほもと の 役員 やくゐん 信者 しんじや にも、 世間 せけん の 御多分 ごたぶん に 洩 も れず 此 この 種 しゆ の 人物 じんぶつ が 蝟集 ゐしふ して 居 ゐ た。 日出雄 ひでを は 各人 かくじん 特有 とくいう の 長所 ちやうしよ 短所 たんしよ を 知悉 ちしつ してゐる。 故 ゆゑ にその 長所 ちやうしよ を 見 み て 適材 てきざい を 適所 てきしよ に 用 もち ゐむとした。 頑迷固陋 ぐわんめいころう にして 小心翼々 せうしんよくよく たる 凡俗的 ぼんぞくてき 役員 やくゐん 信者 しんじや の 目 め には、 日出雄 ひでを が 人 ひと を 用 もち ゆる 点 てん に 於 おい て 大 おほ いに 不平 ふへい を 漏 もら してゐる。 故 ゆゑ に 日出雄 ひでを が 近 ちか く 用 よう を 命 めい ずる 役員 やくゐん は 一般 いつぱん の 目 め より 不正者 ふせいしや 或 あるひ は 悪人 あくにん と 見 み えたのである。 乍然 しかしながら 神界 しんかい の 御用 ごよう は 人間 にんげん の 意志 いし に 従 したが ふべきものでない。 神 かみ の 命 めい じ 玉 たま ふ 人物 じんぶつ こそ 神 かみ の 御用 ごよう をつとむるに 適 てき したものである。 因襲 いんしう や 情実 じやうじつ や 外形的 ぐわいけいてき 行為 かうゐ を 見 み て 人 ひと を 左右 さいう すべきものでない、 敢然 かんぜん として 所信 しよしん を 遂行 すゐかう してこそ 初 はじ めて 神業 しんげふ の 一端 いつたん に 奉仕 ほうし し 得 え らるるのである。 多数者 たすうしや の 非難 ひなん を 斥 しりぞ け、 エス 語 ご を 採用 さいよう しブラバーサを 以 もつ て 之 これ が 普及 ふきふ の 主任 しゆにん に 任 にん じ 日支 につし 親善 しんぜん の 楔 くさび たる 五大教 ごだいけう 道院 だうゐん を 神戸 かうべ に 開 ひら き、 隆光彦 たかてるひこ を 以 もつ て 主任者 しゆにんしや となし、 蒙古 もうこ の 開発 かいはつ には 真澄別 ますみわけ を 参謀長 さんぼうちやう となして 時代 じだい 進展 しんてん の 挙 きよ を 進 すす めたのである。 扨 さ て 蒙古入 もうこいり に 就 つ いては、 昨冬 さくとう 王仁蒙古入記 おにもうこにふき と 題 だい し 霊界物語 れいかいものがたり 第六十七巻 だいろくじふしちくわん に 編入 へんにふ した。 乍然 しかしながら 飜 ひるがへ つて 考 かんがへ ふれば 種々 しゆじゆ の 障害 しやうがい のため、 事実 じじつ を 闡明 せんめい するの 便 べん を 得 え ず、 不得已 やむをえず 上野公園 うへのこうゑん 著 ちよ として 天下 てんか に 発表 はつぺう する 事 こと としたのである。 故 ゆゑ に 本巻 ほんくわん は 六十七巻 ろくじふしちくわん の 代著 だいちよ として 口述 こうじゆつ し 専 もつぱ ら 内面的 ないめんてき 方面 はうめん の 事情 じじやう を 詳記 しやうき する 考 かんが へである。 文中 ぶんちう 変名 へんめい を 用 もち ゐたのも 思 おも ふ 所 ところ あつての 故 ゆゑ である。 本サイトは Reikai Monogatari Net (霊界物語ネット)略して「レモン」とお呼び下さい。 / 本サイトはが運営しています。 連絡先 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。 () / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム等)は飯塚弘明にありますが、出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますので、どうぞご自由にご利用下さい。 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。 現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。

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